こんばんは。夜の兄貴ココアです。
今夜のBGMは、バッハの「G線上のアリア」。
この曲、もともとは「管弦楽組曲 第3番」の中の「エア(アリア)」という1曲でした。それから100年以上たった19世紀の後半に、あるヴァイオリニストが、ヴァイオリンのいちばん低い1本の弦、G線だけで弾けるように編曲したんです。「G線上の」という名前は、そこから来ています。
たった1本の弦でも、こんなに美しく歌える。 今夜は、そんなことを思い出しながら聞いてほしいお話です。
突然ですが、ひとつ質問させてください。
あなたが今の仕事を「辞めたい」と思った、一番の理由はなんですか?
ぱっと答えが浮かんだ人もいれば、「ひとつに決められないな」と思った人もいるかもしれません。 今夜のテーマは、「人は、なぜ仕事を辞めるのか」です。

数字で見る「辞めた理由」
まずは、国の調査を見てみましょう。 厚生労働省の「令和6年雇用動向調査」では、転職した人に「前の仕事を辞めた理由」を聞いています。定年や契約期間の満了などを除いて、多かった理由を並べると、こうなります。
男性
- 給料など収入が少なかった(10.1%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(9.0%)
- 労働時間、休日などの労働条件が悪かった(8.6%)
- 会社の将来が不安だった(7.4%)
女性
- 労働時間、休日などの労働条件が悪かった(12.8%)
- 職場の人間関係が好ましくなかった(11.7%)
- 給料など収入が少なかった(8.3%)
お金、人間関係、時間。だいたい予想どおり、という人も多いと思います。
でも、わたしがいちばん気になったのは、じつは別のところでした。 男女ともに、いちばん割合が大きかったのは**「その他の個人的理由」**(男性20.2%、女性24.3%)だったんです。
用意された選択肢の、どれにも当てはまらない。 辞める理由って、それくらい人それぞれで、ひと言では言いにくいものなんですよね。
辞める理由は、ひとつじゃない
もうひとつ、数字には出てこないことがあります。 それは、理由はたいてい、ひとつではないということです。
給料が少し不満。上司とも、なんとなく合わない。残業も増えてきた。 ひとつひとつは「まあ、我慢できる」くらいのことでも、それが毎日少しずつ積もっていく。
コップに水が少しずつたまっていくようなものです。 そして、ある日の何気ないひと言や、ちょっとした出来事が最後の一滴になって、あふれる。
だから、「そんなことで辞めるの?」と言われても、気にしなくていいんです。あふれたのは最後の一滴でも、コップを満たしていたのは、それまでの毎日なんですから。
「辞めたい」の奥にあるもの
辞めたい気持ちの奥には、たいてい「本当はこうしたい」という願いが隠れています。
- お金が理由なら、「自分の働きを、ちゃんと認めてほしい」
- 人間関係が理由なら、「安心して、いられる場所がほしい」
- 時間や休みが理由なら、「自分や家族のための時間を、取り戻したい」
- 会社の将来が理由なら、「この先も、ちゃんと生きていける道がほしい」
「辞めたい」は、わがままではありません。 自分が大事にしたいものが、いまの場所では守れていない。それを知らせてくれる、大事なお知らせなんです。

辞める前に、自分に聞いてみたい5つのこと
もちろん、「辞めたい」と思ったら、すぐに辞めなきゃいけないわけではありません。 迷っているなら、一度、自分にこう聞いてみてください。紙に書き出すのがおすすめです。
1. 一番の理由を、ひと言で言うと?
冒頭の質問に戻ります。 いくつも浮かぶなら、全部書き出してから「どれかひとつだけ解決するなら、どれ?」と考えてみてください。それが、いまのあなたの一番の理由です。
2. それは、いまの職場で変えられること?
部署を変えてもらう、働き方を相談する、上司以外の人に話してみる。 職場の中で変えられることなら、辞める前に一度だけ試してみる価値があります。変えられないとわかったなら、それもひとつの答えです。
3. 次の職場でも、同じことが起きない?
たとえば「人間関係」が理由なら、どんな人と、どんな場面でつらくなるのか。 そこまで具体的にしておくと、次の職場を選ぶときの、大事な物差しになります。
4. 体と心は、もう限界じゃない?
これは、いちばん大事な質問です。
眠れない、朝になると体が動かない、休みの日も仕事のことが頭から離れない。 そんな状態が続いているなら、ほかの4つの質問は、いったん置いておいてください。まず休むこと、離れることを優先していいんです。心や体の不調が続くときは、病院やカウンセラーに相談してみてください。
5. 辞めたあとの暮らしは、どうなる?
最後は、現実的なお話です。 次が決まるまで、生活費はどれくらいもつのか。使える制度はあるのか。 不安をゼロにはできなくても、「何か月なら大丈夫」とわかっているだけで、気持ちにずいぶん余裕が生まれます。
質問が5つもあると、ちょっと面倒ですよね。全部じゃなくて、1番と4番だけでも十分です。ココアを飲みながら、ゆっくりどうぞ。
辞めることは、負けじゃない
「辞める」と決めると、どこかで「逃げた」「負けた」と思ってしまう人がいます。 でも、わたしはそうは思いません。
自分が大事にしたいものを守るために、場所を変える。 それは逃げではなく、自分の人生の、ハンドルを握り直すことだと思うんです。
もちろん、続けることを選ぶのも、立派な答えです。 大事なのは、辞めるか続けるかではなくて、自分で考えて、自分で選んだと思えることなんですよね。
なお、残業代が払われない、ハラスメントを受けているなど、職場とのトラブルで困っているときは、各都道府県の労働局にある「総合労働相談コーナー」で、無料で相談できます。

今夜のまとめ
- 国の調査で多い辞めた理由は、給料・人間関係・労働時間。でも一番多いのは、選択肢に収まらない「その他」
- 辞める理由はたいてい積み重ね。「辞めたい」は、大事にしたいものが守れていないというお知らせ
- 迷ったら「一番の理由は?」「体と心は限界じゃない?」の2つだけでも自分に聞いてみる
冒頭の質問、あなたの答えはなんでしたか?
もしよかったら、お便りで教えてください。「辞めた理由」でも、「辞めなかった理由」でも、もちろん大歓迎です。
1本の弦だけでも、ちゃんと歌える。どこで、どんなふうに働くとしても、あなたの音はちゃんと鳴っています。